おめでとう、緒形健一!

S-cupワールドトーナメントを緒形健一が制した。僕はスポナビを見る前に、格闘技のことなんて何も知らん嫁さんに「これで緒形が優勝しとったら、俺ぁ泣くね!ああ、泣くね!」と宣言して、いざ結果を見ると、何と緒形がサワーに勝って優勝してるじゃないか!
緒形という男のここまでの道のりたるや、困難を極めた。神に見放された男とは緒形のことである。
吉鷹弘引退後、SBの将来を担う男と期待されていたが、デニー・ビルやラモン・デッカー、シティサック・ト−・アヌソンといった強豪相手にボコボコにされながらも、善戦し、しかし最後はKOされ、勝ち星のない日が続く。それでも真面目一徹、真正面から勝負する戦いを続ける。そうするうちに、次第に脳にダメージが蓄積、ダグラス・アラン・エバンスというDRAKA王者ながら、何でもないはずの相手の、何でもないパンチをもらって、1ラウンドKO負け。長期戦線離脱を余儀なくされる。
そうしているうちに、かつて吉鷹が輝いたシュートボクシング伝説の祭典S-cupの再開が決定する。ところが、緒形はS-cupを夢見て戦ってきたはずだが、脳のダメージの回復に思いの他長くかかり、結局S-cup2002に間に合わなかった。S-cup2002の舞台では、土井広之が日本代表として戦い、アンディ・サワーが衝撃的な日本初見参を果たすのを横目に、リングスルールでナーコウ・スパインという意味不明の選手相手に総合格闘技戦を行う羽目になる。
その後、シュートボクシングルールで復帰し、一進一退を繰り返しつつも、少しずつ調子を上げていく。その頃世の中では、K-1MAXが人気を博しだし、MAX日本トーナメントに緒形がSB代表として参戦する。1回戦の相手は、当時魔裟斗に唯一匹敵しうる日本人と考えられていた武田幸三。何と緒形は、武田相手に1ラウンド序盤にアッパーでダウンを奪い、その後も滅多打ちにする。しかし、緒形は自らの踏み込みで試合前からの膝の傷を悪化させ、セコンドがタオル投入。敗北を喫するとともにまたも長期欠場へ。
そして、2004年、ついについに念願のS-cup参戦を果たす。ところが、第1試合開始早々に、相手の跳び膝が目尻をかすり、流血、何もしないままTKO負け。同トーナメントではリザーバーから宍戸大樹が準優勝し、サワーが2連覇。その後、宍戸は強豪相手に連戦連勝、サワーはK-1MAXを制覇。緒形はトップ戦線に何とか食い下がる戦いを続けていた。
こんなコンテキストで迎えた今大会だった。
緒形のこれまでの選手人生は、あまりにも不幸ずくめだった。しかし、緒形は全く諦めなかった。その緒形が、今やSBのエースといわれる宍戸と、世界最強の呼び声高いサワーを、得意のストレートで倒して優勝。こんな強い生き様の男、俺は知らんぞ。
緒形健一おめでとう!